開催趣旨

CBI学会ではその名前が示す通り、多様なバックグラウンドを持つ専門家の交流が盛んに行われてきました。一方で、学部教育などでは伝統的な分野の垣根は依然として存在しています。現代の健康研究や創薬研究における個別化ニーズに対応するためには、従来の異分野交流を超えて、各分野からの知識や技術を持ち寄った上で、新たな多様性を生み出す試みが必要だと思われます。本大会では、その取り組みを表現するために、モデリングというあえて古典的な、しかし一般的な広がりを持つ言葉を用いることにしました。

構造生物学では、モデリングという言葉が古くから使われていました。X線結晶解析によって得られる原子座標は直接の観測量ではなく、化学の知識などを加えた「モデル」として提示されます。実験と計算は連続的なものであり、その傾向はクライオ電子顕微鏡解析の進展などにより、近年急速に加速しています。他方、生物学出身の研究者が、一分子細胞シーケンス解析を行い、その結果を用いて自らが機械学習による広義のモデリングを行い、そこで選ばれたタンパク質の立体構造と相互作用をモデリングする、といったタイプの研究もこれから益々一般的になると考えられます。分子シミュレーションを含む広義の数理モデリングと、機械学習などのデータ駆動型アプローチの密接な連携が進む中、モデリングの基礎としてのデータベースの重要性を改めて強調するために、もう一つのキーワードとして、大会テーマの中にこの言葉も盛り込むことにしました。

ここまでは主に、技術における多様性でしたが、対象についての多様性の意義も明白です。従来の分子による介入という創薬研究から、健康や栄養研究を包含するアプローチへの広がりは、まさに疾患や個人の多様性に起因するものに他なりません。本大会が、多面的なモデリングによる新たな多様性創出への道筋を切り開く一助になればと思います。

CBI学会2024年大会

大会長: 水口  賢司(大阪大学 蛋白質研究所)
実行委員長:夏目  やよい(医薬基盤・健康・栄養研究所)